クリムトが捧げるベートーベンへのオマージュ 1
クリムトが捧げるベートーベンへのオマージュ 1
グスタフ・クリムトと言えば、日本でも人気を博す代表傑作Der Kuss(接吻)を描き、浮世絵や日本の家紋からも作風に多大な影響を受けたことで有名な20世紀のウィーンの画家ですが、そんなクリムトがベートーベンの第九へのオマージュとして作成したのがBeethoven Frieze(ベートーベン・フリーズ)。
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◆Secessionsgebaude(ゼツェシオンスゲボイデ/分離派館)
そのクリムトのベートーベン・フリーズが見られるのがこちら、Secessionsgebaeude(分離派館)。1897年から1898年に掛けて、ウィーン分離派の展示施設として建設されました。
このセセッション館はカールスプラッツとナッシュマルクトの丁度中間に位置し、白い建物の上には"金色のキャベツ"との愛称を持つ月桂樹のドームが戴かれているのが何よりの特徴です。
(オーストリアの50セント・コインのモティーフにもなっているので、要チェック!)
他の建物群とは一線を画し、神秘的な雰囲気を醸し出すセセッション館に近付くと、白い外壁に金色で施された美しい植物の装飾や、ゴルゴン三姉妹の頭部彫刻が明らかになって来ました。
(三姉妹はそれぞれ「絵画、彫刻、建築」を表すのだそうです)
更に上を見上げると、
"DER ZEIT IHRE KVNST
DER KVNST IHRE FREIHEIT"
とありました。訳すと、
「時代にはその芸術を、芸術にはその自由を」
となります。
◆ベートーベン・フリーズ(帯状装飾)の小部屋
入口でチケット買い、階段を下って地下へと向かいます。
内部は意外に小さくシンプルな構造で、1階入り口にチケット売り場とお土産ショップ、そして地下にセセッション館の模型とベートーベン・フリーズの小部屋があるのみ。
フリーズが「帯状装飾・装飾帯」等と称されるように、ベートーベン・フリーズも白く塗られた壁の上部にのみ、ぐるりと小部屋を囲んた帯状に描かれています。
◆場面1: 幸福への憧れ
左から順に絵を見て行きましょう。
上空には精霊たちが連なって浮遊しており、このモティーフを辿ると、「幸福への憧れ」という場面に行き当たります。
人生の苦悩を象徴した裸の男女が「完全武装の勇者」(黄金の鎧の騎士)に助けを請い、この騎士は人類を代表する者として、幸福を探求しています。また勇者を包み込むようにそっと寄り添う二人の女性は、それぞれ「同情」と「功名心」を偶像化したもの。
◆場面2: 敵対する力
次に現れるのが「敵対する力」というシーン。
ここでは、人類が敵対する力、すなわち危険や誘惑といった世の中に潜在する敵に立ち向かう状況が描写されています。
絵の左手に見られる熊のような様相の獣は、神話の怪物テュフォーン。
画像右手、テュフォーンが大きく広げた羽の中にうずくまる痩身女性は、「我々の心を蝕む悲しみ」の象徴。
テュフォーンの左側に悩ましげなポーズで立つのは(上左写真では二人)テュフォーンの娘にして、セセッション館の入り口にも登場したゴルゴン三姉妹。
上に気持ちのワル~い女性がいますが、これは「病気・狂気・死」との寓意が込められています。
更にテュフォーンの右側に佇む艶やかな三人の女性(右写真)。これもまた「淫欲・不貞・不節制」の具現像。
一人、おデブちゃんがいますよね?この肥え太ったお腹が「不節制」の表現だそうですが、著者は"突き出たお腹とまわしの様な服装"から、てっきり角界の人気力士かと思いましたよ。(少し上のテュフォーンの写っている写真で確認して下さいね!)
◆場面3: 詩
またもや浮遊する精霊たちに導かれ、辿りついた次のシーンは「詩」。竪琴を手にした女性は詩そのものを象徴。人類の幸福への憧れが詩に慰めを見出し、癒されるというのがテーマです。
とても美しい表現ではありますが、絵や音楽などの芸術において、「説明されるまで意味がさっぱりわからなかった」という事態が著者にはよく起こります。
そう云えば、中学や高校の美術の時間でも、著者は何を表現しているのか不明瞭な絵を描いておきながら、「これは心の奥底に潜む深い闇を表している」、「自然崩壊を嘆き悲しむ姿だ」などと、後付けの立派な注釈とともに担当教師に提出したところ、毎回高得点が貰えたのを忘れません。
でもそれと天才画家クリムトさんの傑作を一緒にしちゃいけませんよね?(笑)
もっと学究的人生を送れば、いずれ解説なしでも絵画が面白いように読み解ける日がくるかも知れません。
話の途次で逸れてしまいましたが、お次はいよいよ最後のクライマックス・シーン、「この接吻を全世界に」が登場します!長くなってしまったので、次回掲載しますね。お楽しみに!
<続編: クリムト傑作「この接吻を全世界に」2
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